第3回堀川賞優秀作品

第3回堀川賞 優秀作品

飛翔       人間探究科 小林 薫

 「頑張る」―この言葉には何か辛いことに我慢して取り組むという意味が込められている気がする。そして私たちは「頑張っ」て勉強(学習)せよとほとんど常に言われる。しかし私は高校三年間でこの意味で「頑張っ」て勉強したと感じたことはほとんどない。なぜなら新たなことを学ぶ、あるいは自分を高めることにつながる勉強というものは知的好奇心を刺激する、楽しいものだということを堀川高校で教えられ、自分でもそれを実感してきたからだ。とりわけ一、二年時に取り組んだ「探究基礎」では自ら主体的に問題点を見つけ詳しく調べていくといった高度な研究活動を行い、受動的な学びでは得られない充足感を味わうことができた。そしてこのことが具体性を伴った「経験」であったために私の学習姿勢がよりよい形に変わったのだと思う。

 何事にしろ、経験と単なる知識との間には大きな隔たりがある。自ら経験したことは理解度、記憶の定着において格別に素晴らしいものがある。何かを知っているだけでは不十分でそれを活用できることこそが生きる力につながる。これを痛感させてくれたのがNZ研修旅行での英会話・文化の相互理解であり、探究基礎の集大成であった論文執筆・口頭発表会であった。

 一五歳から一八歳の日々は知らず知らずの着実な成長の積み重ねであった。そして今振り返ってみるとそこに飛躍的な進歩を感じるのだ。

 何よりも自分のためである勉強は苦ではなかったが、カリキュラムや受験のために一定の制約を受け、思う存分には知の触手を伸ばしきれないと感じることも多々あった。だからこれからの大学生活では自分の夢や目標に向かって、また知的好奇心を存分に発揮してこれまで以上に充実した主体的学習に取り組みたいと思う。

 私には弁護士になるという夢がある。人と人の間におこる紛争を解決し社会に貢献することが目標である。そのためには論理性、交渉力など知識以上の具体的な能力が必要とされるだろう。希望は現実から遊離した虚構であってはならない。どこまでも実現可能なものにするため、いっそう自分を磨いていきたい。

飛翔       人間探究科 小塩 慶

 十期生は「炎」だ。不死鳥が再生するように、堀川高校が生まれ変わりさらなる発展を遂げることを願って付けられた名前だと、入学式でうかがった。堀川高校での三年間で、炎に対する考えもより深いものになった。歴史や地学を学び、火の使用が人類の進化においていかに重要なものであったか分かった。また英語の授業で読んだ英文には、あらゆる物が地に向かって落ちていくなか、火だけが神聖であり天に向かって上昇していくのだと、古来より考えられてきたと書かれていた。きっと炎には、物事を浄化して上へ上へと運んでいく力があるのだろう。堀川高校で過ごした時間は、まさにその炎を燃やすための時間であったように思う。ハードな宿題など勉強面はもちろん、探究活動や文化祭などの学校行事もそうだ。特に探究活動では、大学での高度な研究につながる、より主体的で専門的な研究を行った。この活動は、これまでの講義を受ける学習とは大きく異なっていた。何を調べるかは自分次第であったし、単なる調べ学習に終わらないものにするために、どのようにオリジナリティーを出すかなどに苦労した。自分で研究を進める難しさはあったが、同時に学問の奥深さも感じられた。堀川高校での活動は、確かに大変な面もあったが、やりがいがあり自分の力になっていると思う。きっとこれからの活動の原動力となっていくであろう。

 今、「ビッグ・ボックス」を巣立った僕は、大学生活やその先の漠然とした未来を前にして、どの方向に飛ぶべきか分からず、まだまだ思案に暮れている。しかし飛ぶという挑戦をして初めて見えてくるものもきっとあるはずだ。少し背伸びをした探究活動など、飛翔はすでに始まっていたのかもしれない。決められた道を進むだけよりも、自分自身で道を選択していくほうが楽しいはずだ。これからは、堀川高校で培った、どのような道へも進むことのできる確かな力を発揮し、燃やして、炎の上昇する力を借りながら、さらなる高みへと自分だけの道を見つけて飛翔していきたいと思う。

飛翔       普通科 I 類 藤原大地

 私は、堀川高校での三年間、野球に命を懸けてきました。そこで、私は野球以外にもチームの在り方や感謝の気持ちを学ぶことができました。

 二年の秋、新チームになると同時に私は主将に任命され、堀川高校野球部がどうあるべきか、そしてチームとしてどの方向に向かうべきなのかを日々考えていました。主将としてチームをまとめるとき、まだまだ未熟であったチームでは上手くいかずに悔しい日や情けない日が続きました。いつかはチームが変わることを信じて、チーム全員に「チームの改革」を言い続けました。私が伝えたかった「チームの改革」とは二つあります。一つ目は、部活動だけではなく、学校生活でも野球部が模範生となれるように、姿勢、態度を変えていくこと。二つ目は堀川高校の伝統や野球部の伝統を受け継いで、さらなる高みをめざすこと。私は主将としてチームの方向づけをし、自らが率先してチーム改革を実践することが責務であると考えていました。

 ある試合の後、チーム全体でミーティングを行い、現状のチームの課題や今後の方向性を考え、何が必要であるのかを訴えました。チームメイトが「これから一年間、大地の後ろをついていきたい」と言ってくれた一言で、チームのみんなに支えられていることの喜びを感じ、また時に厳しさがチームを一つにまとめることを学びました。厳しさと支え合いを知り、チームは一つにまとまり、進むべき方向が固まったのだと思います。この経験こそが私の高校時代の大きな飛翔であり、これからも私を支え続ける心の柱となるのだと実感しています。

 また、チームはたくさんの人に支えられていることも学びました。三年の最後の夏の大会は初戦負けでしたが、雨の中最後まで応援してくれたクラスメイトや両親の姿は、今でも脳裏に焼き付いています。勝利という恩返しはできませんでしたが、私自身もチームも、本当にたくさんの人に支えられていることを学べた最高のチームでした。

 堀川高校では、社会に出た時に大切なことや人間として大切にしなければならないことを数多く学びました。何事に対しても感謝の気持ちを持つことは、今後の人生において、絶対に忘れてはいけないことだと思います。最後に、堀川高校野球部で過ごした三年間は私を大きく成長させてくれ、これから社会へ飛翔するためのたくさんの知恵と勇気を与えてくれました。もう一度生まれ変わることが出来たとしたら、この堀川高校で、このチームメイトと共に「夢の甲子園」をめざしたいと思っています。


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